文学者たちの痕跡

忘却されつつある文学者の闘争について書きとどめておきたいと思います。

個体の地位~ 集団との距離

 前回の記事で多くの人が集まる場が嫌だと書いたが、そこから強引に教育問題に引っ張ってしまった。今日は集団にいる者、乖離した者、自立した者など集団に対する個人の意識に焦点を当ててみたい。そうすれば私がなぜそこまで集団を嫌悪するのか、そしてそこから逃げ自閉的になるのか反省できると思う。

 

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1.民主化した個人とそこから派生した個人~丸山眞男の解説

 戦中戦後の政治学丸山眞男封建社会から放り出された近代個人のタイプを求心―遠心の軸と結社―非結社の軸で説明しようとした。

           

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 もちろん、一個人がずっと同じ位置にとどまるわけではない。ただ、野暮ではあるがこうした図式化・理論化は漠たる不安・情念を和らげてくれる。高邁な思想家なので彼の定義をそのままここで記載しておこう。

 

民主化した個人(D): 集団的な政治活動参加する。中央権力を通じる改

           革を志向する。

自立化した個人(I): (Ⅰ)から自立するが結社形成的。市民的自由の制度

           保障に関心を持ち地方自治に熱心

私化した個人(P):  民主化タイプと正反対で政治的挫折から私的世界

          に引きこもるタイプ。官僚制化の発展に対応。

アトム化した個人(A)  社会的なものからの逃走。しかし公共問題に無

            関心であるが孤独から逃れようとするあまり熱

            狂的に権威主義リーダーに依存する傾向がある

 

 

2.個に関する我流の解釈

 このように抑えたうえで、私の俗世間観を話させてもらいたい。まず、民主化された個人(democratization)に対する嫌悪が最も甚だしい。その他大勢に入ることで安住する人でこれが義務教育で最重要視される協調性というわけだ。その結果、学校を卒業しても、同僚、同窓会での飲み会でギャーギャーまるで小学校の教室の雰囲気をそのまま持ってくる輩たちがいる。

 

 だがそこに異和を感じたり、背を向けたり、排除・スケープゴートされる個人も出てくる。軽く説明しておこう。

 

排除・スケープゴートされる個人 = 原子化した個人(atomization)

 私自身も小中学生のころそのタイプだったので、今でもそういう子供を見ると不憫に思う。このタイプは実際仲間外れを過度に恐れるから、イジメにあったり不条理な命令にも屈する。そして本心を見透かされているので、決して居心地のいい空間ではない。軸を持たないゆえいろんな考えに振り回される運命にある。

 

 背を向ける個人 = 私化した個人(privatization)

  柄谷行人近代文学者の典型をここに見ている。自由民権運動の挫折や治安維持法による弾圧などで政治活動の挫折からそこから距離を置き斜に構えた態度で嘲笑することで満足を得るもの。しかし現実に対し何ら影響を及ぼすことはない。これは、学校や職場においてもみられる。自分は超越した立場にいると確信しているので孤立することを恐れてはいない。しかし異質な他者との連帯を恐れているのだ。それは自信を支えている何かを揺り動かすか崩壊させてしまう恐れがあるから。ここにいるのが今の私かもしれない。

 

 

異和を感じる個人 = 自立化した個人(individualization)

  集団に対し、排除されるわけでもせをむけるわけでもなく、そこに属しながら異和(普通は違和と書くが文芸批評ではこの字がよく使われる)を感じる人。ふるさとというのはある種の同一性を指す語でそこに郷愁の情を誘う要素がある。同一性は変化を恐れ嫌う。排除されるものはそこになんとかしがみつこうとするか、別の集団、ふるさとを求め彷徨うことになる。背を向けるものは、傷つくことを恐れ至高を気取ったポーズをとる。

 ところが、自立した個人はこの私化した個人とは似て非なるものである。あらゆる場・人間に共通の本質などないと覚悟しているから人との関わりに「暗闇の跳躍」(ソール=クリプキ)が伴う。要するに集団が前提とする法則が通用しない。それにもかかわらず、他者とつながろうとする、アソシエートしようとするのだ。丸山眞男がいうように結社形成的であるのが見て取れる。よって初めに自分が目指す方向・理念と違う方向に行くことも致し方がないと思っているだろう。

 ただ彼が出発する倫理は、学校などで教わる道徳とは無縁で個に根ざしたものであるとだけいっておこう。

 

 

 

 参考にしていただきたい以前の記事。

 

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そして、私の好きな柄谷行人のエッセイ「生活」も読んでもらえればうれしい限りです。これを読むだけで私の真意が伝わると思っています。