文学者たちの痕跡

忘却されつつある文学者の闘争について書きとどめておきたいと思います。

天使と人間

文芸評論家として始まった柄谷行人の思想はその後、論理的批評家そして哲学者へと変遷してきたわけだがテリトリーは広大かつ深遠だ。私は彼を読解する軸は『内省と遡行』という奇妙な作品のあとがきにあるとみた。デビュー作が原点とは限らないのである。こ…

家族について

1.近代家族の特異性 家族に対し嫌悪感を持っている人たちはそこに「愛情という名の束縛」に苛まれているからではないでしょうか。近代家族は自明視されすぎていますが、たかだか19世紀末の産物にすぎません。それがいびつであるのは丸山真男のいう民主化し…

アメリカの一黒人作家

1.許容と闘争という分裂を抱えて ジェームズ=ボールドウィン(1924-1987)は、アメリカでニグロである自分を意識するほど、激しい怒りの衝動に駆られ気が狂いそうなほど苦しんできました。どこかにぶつければ、殺人罪になるか、または自分が葬られる。彼にと…

現実とは何か ~柄谷行人と考える

1.想像物にすぎない現実 「これが現実だ」と悲観的あるいは独断的に語る現実は現実ではない。私が一番腹立たしく思うのは、<現実>にどっぷりつかった現実主義者だ。右も左もわからない社会に出たての若者あるいは少しひきこもっている人に、したり顔で社…

<実無限>としての神 ~数、貨幣

1.発明(でっち上げ)数学の誕生 ドストエフスキー(1821-1881)の『地下室の手記』の主人公はぶつぶつと独り言で2×2=4であることに文句を言って2×2=5であってもいいではないかと度々言い張ります。2×2=4の確実性が気に入らず、譲歩し…

労働者対資本家ではない、商品―貨幣が問題だ。

貨幣の性質=自然生成 いわゆる資本主義を打倒するというのなら伝統的な労働者―資本家ではなく商品―貨幣に焦点を置かねばなりません。前者なら主人と奴隷という人間の対立で暴力的なプロレタリア革命を導いてきました。それは主人と奴隷が入れ替わるだけか、…

交換の原理を掘り下げる

交流、交換のパターン 話す-聞く 共同体(暗黙のルール、掟) 読む-書く 非対称性 (基礎の不在、市場的) 売る-買う 非対称性(価値形態論、市場 ) 今回も場所と交換(コミュニケーション)の質について書いておこう。 1.貨幣蓄積の本質理由 売る立場からの逃避…

沈黙

1.文学者の闇の消滅 ものを書いているとき、私はいいようのない「不快」に襲われる。それは虚しいとか、何のために書いているのかといった空虚感ではない。それは書くということを私が創造したわけではなく、たんに発見したにすぎず、そして私のやっている…

書くということ=内面にある闇の露出

1.書くことと読むこと 書くという行為がなぜこんなに困難を伴うのかずっと思っていた。「自由に書いていい」といわれれば尚更むずかしくこのブログを書いている時もそう。しかしその答えが本棚のある本を手に取って不意に浮かんできた。それは「話す―聞く」…

場所を選ぶ~ 主催者・リーダー・単独者

タイトルにある場所とは、東京、北海道、沖縄という地理的な場所ではありません。複数の人間の関係、またはそこから距離をとるものと排除されたものの意識を指すことにします。 前回と重複するかもしれませんのであしからず。 www.legendaryletter.net 1.…

個体の地位~ 集団との距離

前回の記事で多くの人が集まる場が嫌だと書いたが、そこから強引に教育問題に引っ張ってしまった。今日は集団にいる者、乖離した者、自立した者など集団に対する個人の意識に焦点を当ててみたい。そうすれば私がなぜそこまで集団を嫌悪するのか、そしてそこ…

闘争という逃避に抗して~ 花田清輝の場合

孤独な闘争 花田清輝は戦時中に『復興期の精神』を書き綴っていた。ただ戦時中とは思えないほどレトリックを巧みに使ったオシャレな本で”転向”や”精神”に対する懐疑を表現しているが検閲にひっかかることはほぼなかった。 彼は自らを16世紀ルネッサンス時…

教育を語る ~教育権の独占

集団行動 どうも親睦会というものは町内であれ、親戚であれ苦痛に感じる。理由は、まず話題が最大公約数的つまり当たり障りのない退屈なものだからだ。これは憶測だが、10人前後の人が集まったとしても彼らのうちの二人か三人くらいしか楽しんでいないだろう…

生活

柄谷行人の「死後をめぐって」というエッセイのなかに「生活」というのがある。生活は今でも現実であるから死語とは言えないが、このエッセイは1989年に書かれたものである。この「生活」が意味するのはマルクス主義<知識人>の自意識にあるものと考える…

仮想通貨の起こり

貨幣論 かなり地味な運動であったNAM(New Associationist Movement) は柄谷行人を発起人とする資本と国家を揚棄する運動で20世紀末から21世紀の最初の2年の間の行われた社会運動である。 NAM―原理 作者: 柄谷行人 出版社/メーカー: 太田出版 発売日: 2…

東浩紀 「ソルジェーニツィン試論ー確率の手触り」について

東浩紀は1971年生まれであるから、この世代が柄谷行人らの文壇(批評空間)に傾倒するのは珍しい。学生時代に、修士論文とは関係なく自発的に論文を柄谷のもとへもっていった。ただし、その1,2作品で彼はその文壇から決別することになる。もちろん柄谷への敬…

梅崎春生「幻化」を再読して

戦後派作家梅崎春生の小説「幻化」が本棚から目に触れたのでてにとってみました。とにかく地味な内容ですが、二度目読むとジワリジワリとボディーブローのように効きます。読書メーターという読書管理サイトにも投稿した記事をここでも残しておこうと思いま…

CHAPTER3 受動態・There is構文・「強調構文」  SECTION3-3

強調構文を取り上げましょう。この構文はいつでも自由に使えるというものではありません。何らかの必然によって表現されるものなのです。3つのパターンに分類して説明します。 It is の後に名詞要素があるパターン It is の後ろに副詞要素があるパターン Wh…

「歴史の反復」「他者」「言語」

英文法 There is 構文について There is ...は「・・・がある」という一義的な解釈しか知りませんでしたが、実際人文書などの論文に取り組む際にはその用途についてもっと深く知っておく必要があると痛感しました。 私も例文を探しながらその説明を通して 、…

CHAPTER3 受動態・There is構文・「強調構文」  SECTION3-2

主題と情報構造から見たThere is 構文の役割 Thereは具体的な内容を持たない主語で主題であります。それは付加疑問をつけたときにThere is ....isn't there?となることからわかりますね。 では、主題が無内容ということはどういうことでしょう? それは 「以…

文学者について

怒り・妬み・悲しみといった気持ちは受動感情であるゆえ世界内存在の人間はそれらを超越することはできないとスピノザはいった。では自然に任せ放置しておけばどうなるか。それは際限なく拡大し人間を破滅させるにいたる。そこから離れるにはそうした感情が…

CHAPTER3 受動態・There is構文・「強調構文」  SECTION3-1

これまでは、主語S以外のものが節の先頭に置かれると、その節に託した書き手のメッセージが大きく変わることを説明しました。 CHAPTER3では、受動態・There is構文・「強調構文」の文法は中学・高校で学んできたのですがその存在理由、情報構造における役…

ニヒリズム=意味の要求

否定の否定 ~絶対肯定 予備校に在籍していたころ、英文でニヒリズムを題材にしていた講義があった。その作者はあらゆることを知りすぎたのだろうかすべてに価値を見出せなくなった。カネ、愛情、誠実、力、知恵、そして生命さえも。それはビルゲイツ、アン…

遊ぶように働くこと  ~知の再生

産業構造の転換期というのは新手はまず嫌悪されるのは常だ。第一次産業革命は手工業の職人さんから機械が仕事を奪った。これまで手先の器用な人たちは窮乏することになった。第二次革命は重工業で国家主導の独占資本が幅を利かす。エンゲルスはそれが社会主…

根拠のない世界

1.発明としての数学 現代数学の常識は私たち一般人には驚愕である。 「一つの数学体系は無矛盾であれば真である必要はない」 たとえば、平行線は無限遠点で交わるという仮説を立てる。それ以上の根拠は求めずただ演繹すれば非ユークリッド幾何学が成立する…

CHAPTER2 主語S以外のものが主題になる場合  SECTION2-3

M2 V S の語順 C V S の語順 a) M2 V S の語順 副詞要素M2の後にS Vとくるのは前にも話しました。 今日は先に動詞Vが来て主語Sが続く場合を取り上げ、それがどのような情報構造上の違いをもたらすのか考えたいと思うのです。 ①At stake, then, is how this "…

これからがポストモダン!  ~スマホ、パソコンを使って

インターネット黎明期にシステム行動論というのが流行った。要はコンピューターの働きを言うのだが、経営における多要素間、産業における多分野間の関係そのものを運動しつつある姿で捉えようとするものだ。 今のITはより高度化し人工知能AIが日常生活にます…

楽しそうに見えて本当は寂しい集団

今週のお題「家飲み」 前の記事で倫理をもつことの大切さを説きました。もう一度繰り返しますと 倫理は個人に根ざしたものであるが故にそれを前提としない他者に説得、教えるという努力を伴うものでないといけない。 この教えるというのが難しいのです。学校…

副業容認、それをどう理解するかにかかってくる!!

数日前に、政府がサラリーマンの副業を容認することを発表しました。これは大きな前進ではないでしょうか。 ただ、一般企業も体力が落ち社員のベースアップができないということもあるでしょう。だが労働者にはもっと働いてほしい、そして税金を納めてほしい…

サービス残業はもってのほか、そんな暇あればサラリーマンも勉強!

大きな転換期を迎えている。一夜にして軍国主義から民主主義に変わったということではないが、これまでの価値観が通用しなくなった場面に私たち壮年層は出くわしているはずだ。それで自分自身への戒めのつもりで書いた。 時間という希少資源に気づこう 建前…